はじめに
本ブログの目的は、ただしく「国家」の有り様、「日本のナショナリズムは稀なもの」であることを皆が理解することで、ただしい「国家観」を共有すること。
そして「国家」における「国防」が重要であることを明白にすることを目指します。
これを何回かに分けてブログで書いていこうという試みです。
前回は、「租税国家」「軍事技術と国家」「重商主義と経済政策」について歴史の中で形成された裏付けられた定義を、体系的に頭出しをしました。
今回は、「戦争が革命を生む」「戦争とナショナリズム」についてどういう構成要素になっているかというのを簡潔にまとめたものです。
この回では、ナショナリズムの成立の原点について、戦争プロセスという視点において、地政経済学つまり富国と強兵の妥当性を証明することを試みています。
専門的な文言が多くなっていますが、過去のシリーズを読み返してもらえると理解できる内容となっています。
なかなかとっつきにくい内容ですが、最後のひと頑張りです。この事実を理解して、国家観というものについて周知していただければ幸いです。










戦争が革命を生む
 マクニール曰く、フランス革命の最重要の原因を、人口増加に求めている。
 18世紀半ばからフランスとイギリスは急激な人口増加が起きた。
 人口増加において食料や雇用が追いつかなくなった都市では暴動が起きた。
 フランスでは、国民皆兵によるフランス革命とナポレオン戦争で、マンパワーを吸収。
 イギリでは、商工業の発達による産業革命で、マンパンワーを吸収。
 イギリスもフランスも、「指令志向型」(国家強制)と「市場志向型」(資本・民間)の混合対応によって、人口過剰の危機に対処した。

地理的要因 マッキンダーの地政学
 イギリスは市場志向型(民間の私利私欲)に重点が置かれたのは、海に囲まれた立地環境から余裕を持って資源動員を選択することができたから。
 フランスは指令志向型(軍事的機構)に重点が置かれたのは、大陸であったため隣国との地政学上の緊張などがあったから。
 イギリスとフランスのように地理的環境が「国内体制の有り様」を決定づける。
 
ヒンツェの洞察
 しかし、戦争や戦争準備の圧力が国家のあり方を規定するというヒンツェの洞察に忠実に従うなら、 フランス革命と産業革命の原因には戦争があったということを見逃すことはできない。

スコッチポルの研究 「国家と社会革命」
 ヒンツェの歴史社会学継承者のシーダ・スコッチポルの研究(フランス・ロシア・中国の比較研究)によれば、革命の勃発は戦争という圧力がきっかけとなっている分析。
  ブルボン朝⇨七年戦争⇨フランス革命
  ロマノフ朝⇨第一次世界大戦⇨ロシア革命
  清朝中国⇨日清戦争⇨辛亥革命
 いずれも戦争による負担増と財政の立て直し、近代化、隣国や大国からの外圧により、政治改革が必要となる。
 そのため、国家を支配層(地主階級)の反発を招き、行政・軍事機構が崩壊する結果となり、下層階級による社会革命を誘発した。
  スコッチポルのこれらの理論は、社会革命の「逆第二イメージ」的解釈の提示であった。

「逆第二イメージ」的解釈
 おさらいだが、「逆第二イメージ」とは、1970年代の歴史社会学で「国際関係の圧力が国家を規定する」という現実を直視した視点である。 それは「国家が国際関係を決定する」という、近代国家の形成過程の解明であって、 「国内の経済構造が、地政学的な国際情勢によって影響」され、 その逆に「地政学的な国際情勢が、国内の経済構造によって影響」されるという「逆第二イメージ」の視点で 相互作用を解明する理論こそ「地政経済学」と呼ばれるべき理論が目指す地点である。

 フランス・ロシア・中国の革命は、思慮ある行動でも、自称革命家によるものでも、旧体制の強力な政治勢力によるものでもなく、 「帝国が激化する軍事競争・海外からの侵略」と「農業社会的な階級構造と政治制度が君主制の対応に課した制約」という、 二つの圧力の結果であり、革命的政治機構が勃発し、行政機構・軍事機構の崩壊に至った。
 ホーエンツェレルン家プロイセンや江戸時代の徳川日本でも、国際紛争の圧力はあったが社会革命は起きなかった。 なぜなら、より官僚制的であったからだ。従って権力闘争はエリート層にとどまり、階級間の闘争には発展せず、 社会革命を引き起こすまでには至らなかった。
 
戦争や国際圧力の負荷に耐えられる国であるか
 国内構造(政治・社会構造)が耐えられる場合、国家を形成したり・改革したりする。
 国内構造(政治・社会構造)が耐えられない場合、国家の崩壊や革命が起きる。
 
外発的根拠
 日本では、黒船来航などの国際関係の圧力に幕臣体制が耐えられずに明治維新が起きたが、近代化は外発的であった。
 フランス革命は、イギリスとの戦争という国際関係の圧力により旧体制が崩壊した外発的な革命である。
 ヨーロッパの近代化は、国家間の紛争を圧力として進められてきた。もっと言えば、近代化というもの自体、国際環境の圧力から外発的に生じたものなのである。
  
  
戦争とナショナリズム

マス・アーミー(国民皆兵)の誕生
 地理的・政治的・経済的要因が相まってフランス革命が勃発し、ブルボン王朝は崩壊した。
 革命の結果、国民の徴兵によって組織された陸軍が誕生し、軍事組織の革新が行われ、飛躍的な大規模化を遂げることとなった。
 これは、ヒンツェの言う第三期の軍国主義を画すものである。(前のブログは軍国主義第二期の解説)
 マクニールが明らかにした、この「戦争の技芸」の革新は、国民国家という新たな国家構造の形成を促したのである。
 
軍事教練の導入による団結意識の形成
 マクニール曰く、「マウリッツ式軍事教練」の導入により心理的・社会的効果が発見されたという。
 これは何かと言えば、軍事訓練において、集団で長期間拍子を揃え手足を揃え筋肉を動かすと、非常に強い社会的紐帯が生まれ、共同体を形成できる効果がある。
 原始社会では、大型獣の狩りで必要な集団行動を可能とすべく、踊りでリズム運動を通じ仲間意識を強化していた。
 この14世紀に勃興した軍事教練は、人類が持つ社会性の原始的な本能を活用しもので、第一次集団的な共同体を人工的に作り出せることを発見した。
 19世紀でも軍事教練による共同体の連帯意識を元に、ヨーロッパ諸国は国家による徴兵制によりマス・アーミーを組織し共同体という士気の向上を目指した。
 
マス・アーミーと国防意識の教育
 ナショナリズムは、その「生命の危険な任務」に動員するための原動力となる。
 国民皆兵を実現するには、学校教育を通じ、標準言語の修得によるコミュニケーション促進、国の歴史や文化や地理を共有し、愛国心を称揚(褒め称え)するのである。
 徴兵後の軍隊生活のなかで国家の存在を強く意識させられることとなる。
 
本能に響くナショナリズム
 しかし、いくら愛国の教育を受けようと、軍隊の原始的な社会性(筋肉を動かし共同体連帯意識を強化する)によって、生命の危険を伴う任務を遂行するのは困難であろう。
 アンソニースミスが指摘した、ネイションは「想像の共同体」以上に強く感情が揺さぶられるものとして経験されるものであった。
 宗教社会学のデュルケイムは、社会の統合には聖的な象徴が必要とされることを明らかにした。
 つまり、ネイションとは、聖的な象徴によって統合された近代社会なのである。
 マクニールによれば、軍事教練法が強力な動員力を発揮したのは、原始社会性の本能に訴えかけたことが共同体連帯意識を強化することに成功したという。
 これと同じ類のことが国民国家に言えることでもある。
 ナショナリズムが近代の人工物でありながら、長い歴史に根ざした自然な感情であると経験するのも、それが原始社会性の本能に響くものだからであろう。
 
戦争を通じ国民国家へと収斂(しゅうれん)していった
 ナショナリズムを駆り立てるマス・アーミーを、一部の支配層は驚異と感じ導入しなかった。
 結局は戦争や紛争や緊張の圧力により、軍事力の動員のため国民との交渉を余儀なくされた。
 結果的にナショナリズムが「統治を正統化するイデオロギー」として支配的になった。
 こうして戦争から産み落とされた近代国家は、戦争を通じ「国民国家」へと収斂(もしくは集約)していくことになった。

富国と強兵
 本章では、近代というものが「市場志向型」(富国)と「指令志向型」(強兵)の有機的な相互作用の過程であることを確認した。


天皇と国民

国家とは。ナショナリズムとは。国民統合一致団結とは。


ーおわりに:編集後記ー
いかがだったでしょうか。冷静な客観的事実にとともに国家ナショナリズムに必要なのは聖的な神聖不可侵な要素が必要なことも歴史から紐解きましたね。いちいち世界を見なくても大東亜戦争までの日本を見ればわかる話でもありますが、その記憶がごっそり消されてしまった。そこの国民意識までに戻すまでには、こういった一つ一つ事実を積み重ねていくしかありません。その結果として、我々にとってはこの最後の論理展開において全てのことが理解できたとおもいます。

色々難しかったと思うのですが、「地政経済学」について補足しておきます。
これは国家が隣国を気にせず理想的に国際関係を決めるとかではなくて、現実には隣国との緊張によって決まるわけですというのを明らかにしたものです。
そして経済政策(財政政策)が普段から緊縮だが、積極にせざるを得ないのは戦争圧力によるものであり、本来バランスを保つために普段から積極財政をするべきですが、「戦争は避けるために財政支出をしない」という恐ろしい考えを持ってしまった愚かな日本と、日米に恨みを持ち続けいつか膝待つかせてやると考えている支那の積極財政によって、大きくバランスが崩れて戦争に至るハードルが低くなってしまう。こんな分析ができるような、ましてや国家における国防と経済を因果関係を紐解ける考え方はなかったんですね。この視点がないから経済成長と国防増強の格差が5倍に開いてしまい尖閣は占領されてしまったわけです。従ってもう戦争からは目を背けられません。なんならそういうことにならないように普段から準備をすることが命題になる。もう限界な時期に論理的に説明できる学問が必要でしょうというわけです。ようは「根本」を「現実に即したプラグマティズムに読む」ということです。経済なんて関係ないということで多くのことを分析できていないので合理的な「こうあるべきだ」という教典が先に立ち、社会は失敗してきたわけです。そう言った目線で情報を得る我々も目を肥やさなければならない。もうご承知の通り危機的状況なわけですが。
地政経済学を皆が理解すれば、自民党のような緊縮売国政党など選ばれるはずもありません。従って外交は富国と強兵を前提に進められるわけで、確かに戦争のリスクは以前より高まるのかもしれないが、戦争を仕掛けられない防衛力を持つことも可能になるわけです。舐められない国家ですね。

私はこの本を見たときに、目から鱗も水分も落ちました。
とても驚いたのは、国家やナショナリズムやらという概念は近代で必要に応じて醸成されたものであって、結果的に国民にとっては必要だったものであって、必然の産物であったこと。
トリガーは他国との摩擦であるということ。そして財政政策の進歩もこれまた積極的にならざるを得ない戦争がトリガーであったこと。というしれば納得だが、知ることで究極の事実を理解してしまた凄さみたいなものを感じるのではないでしょうか。こういうことを知りたくて人は小説を書いたり、漫画を描いたり、歌を書いたりするでしょう。そういうことを歴史社会学という観点で説明したわけです。ここが経典を持つ信じるものは救われず地獄に落ちる合理的宗教とは違うことなんです。

人は「道」を歩いていかなくてはならないわけで。それにはその道筋を読み取るあなた自身の思考から判断される「プラグマティズム」が必要なんですね。

宗教の場合はまっすぐ歩いて崖があろうとまっすぐ行って落ちても神の思し召しという真理で片付けてしまう。もう宗教で自分の人生をおろそかにするのはやめましょう。あなたを救うのもあなたが納得するのもあなたの心ではなく脳味噌ですよ。思考です。救われたいならいい本を読みましょう。誰も解決策なんて持ってないですって。神に携わる聖職者と呼ばれる人も肉は食い酒も飲み高級車に乗り高級時計をしているじゃないですか。俗世につかっているんですよ。彼らもただの悩める人間なんです。この人たちが真理を語るとかあったとしたら嘘だわ。彼らもそういった宗教商業主義を広めるための誰かが作ったマニュアル経典を覚えているだけですよ。朝早く起きたからなんなんなんだよ。山に入ったからなんなんだよ。装束を着たからなんなんだよ。神の思し召しって言ったからなんなんだよ。知るかボケです。

宗教を例に言いましたが世の中「こうすればいいHowTo」ばっかりじゃないですか。人が行動をするにもマニュアルばかり。誰かの決めた成功するかわからなん合理的な真理。それは洗脳なんですね。
ちなみに「合理的なマニュアル」と「人がうまくやっていくために規制するルール」は意味合いが違います。

話を戻しますが、この賞の巻末の解説では、ナショナリズムというイデオロギーが生まれる国でなくてはならないわけで、そういう政治をしなくてはならないわけですし、国防を意識する教育は必要なんだということ、そしてその強固な国家ナショナリズムイデオロギーを国民が自発的に持つことで、国防は成立するんだ。という確証が得られたわけです。

憲法起草を考えるときに、常時徴兵を訴える人もいます。しかしまずは国防が国家にとってなぜ必要なのかということを理解しないと戦えないという持論がありました。なぜなら心と体はつながっているからです。これが士気に影響する。ですから精鋭部隊に国家を守ってもらわなくてはならない。それには国防の教育が必要であり、軍隊の地位向上が必要なんですね。ということも同時に明確になったことは憲法と向き合うものとして事実確認ができたわけです。

これで今回の目的は達成しました。きちんと説明できたとおもっています。
なぜわたしが中野剛志氏に感謝するのか。それは、過去の先人たちの客観的な事実と分析を神がかった洞察力で生きた実学としてまとめてくれたこと。しかも問題解決となっている。たんなる思想の列挙ではないわけです。

これを理解して、もし心が震えたなら幸いです。
そして、私やあなたの人生においてどれほど有益な教養と豊かな精神が育まれたのか、これは財産だとおもいます。だって、ナショナリズムについてちゃんと説明できるってすごいことですよ。人の生を語ってしまうのと同じくらいね。

これは偉大な人類科学なのではないでしょうか。


富国と強兵―地政経済学序説
中野 剛志
東洋経済新報社
2016-12-09



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